アイコン 「AV男優のテクニックはすごい」は嘘? 元AV女優が語った現場の裏側【前編】

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「AV男優のテクニックはすごい」は嘘? 元AV女優が語った現場の裏側【前編】

デビューから6作品連続で、TSUTAYAのレンタルランキング1位を獲得。50本以上の作品に主演し、「レンタルの女王」と呼ばれながらも、惜しまれながら3年で引退。その後、川崎のソープランドに勤務して13年という「セックスのプロ」、長谷川瞳さん。

今回、初の著書『ヒアリングセックス』を上梓した長谷川さんに、どうすればもっと気持ちのいいセックスができるのかを、教えていただきました。
――この本を書かれたきっかけは?

長谷川瞳(以下、長谷川):ソープで多くの男性の方と会ってきたんですが、男優さんと同じことをすれば、女の人はイクと思っている男性や、AV で見て知ったテクニックを披露したがる男性が多いなっていうのを、常々感じていたんです。

けれど、なかなか「それ間違ってるよ」とは言えない。やっぱり「すごい気持ちいい! イク!」って言っちゃうんですよね。それってどうなのかなと。だって、それだと男の人は成長しないし、女の人の嘘をつき続けることになる。そうなると、関係が続かないよなって。

――たしかにそれっていい関係とはいえません。けれども、男性だけじゃなく、女性もけっこうAVに影響を受けてますよね。

長谷川:そうなんですね。フェラチオの時に、音をジュポジュポ立てたり、ガシガシやるのも、AVの影響ですよね。でも、女性も愛撫される時に、いきなりガシガシと手マンされてイクとかあんまりないじゃないですか。

男性も女性も、最初は、ゆっくり丁寧にみたいなのなのがいいのに、AV だといきなりガシガシってやってるんです。だから、実は私も AVのセックスシーンでは、イったことはなかったんです。オナニーシーンではあるんですけど。

――っていうことは、AVの中のイっている姿って、演技だったってことですか?

長谷川:そうです。男優さんに恥をかかせたくないっていうのもあるし、あとAVには台本があるんですね。「ここでイって」って言われても、そんな自在にイケるわけないじゃないですか。

当時は、まだ若かったのでクリトリスへの直接の愛撫はちょっとキツくて、直接剥かれてガーってやられると、「もうやめてくれ」とか思いながらも、それでもやっぱりイクを連発しなきゃいけなかった。

当時、嘘をついていたことに対する贖罪のつもりで、今回、『ヒアリングセックス』を出したっていうのもあります。
――見ている側は、意外とAVの嘘に騙されちゃってるんですね。

長谷川:そうなんです。それで、「AV女優はエロいからすぐやらせてくれる」とか「男優のテクニックはすごいんだろう」ということをみんな言うんですけど、「いやいやいや、違うよ」って。

――ええっ! 男優さんのテクニックって、すごくないんですか?

長谷川:実は男優さんって、テクニックというよりもコミュニケーション能力が高いんですね。男優さんって、単体女優さんだけ相手にしてるわけじゃなくて、そのへんの素人さんと同じような、あんまりお体のお手入れもしてないような女の子にも、同じように接するんです。

売れてる子だからってチヤホヤするわけでもないし、初めての人だからって、粗雑に扱うこともない。ちゃんとセックスをするっていうのが、男優さんのすごいところだと思っていて。

そういうところが評価されずに、テクニックばっかりフィーチャーされちゃってるのがすごく残念だなと思って。

――なるほど。男優さんは、女性との接し方のプロでもあるんですね。

長谷川:そう。それで、AVなので女優さんに潮を吹かせることもあるんですけど、男優さんは、すごく深爪にしてるんですね。深爪にしてるっていっても、撮影直前に切ったりはしないんです。

けど、素人の場合は、そこまでは知らないから、直前に爪切っちゃえばいいみたいな感じで。けど、それで指先に傷が出来たら、病気の感染リスクも出てくるじゃないですか。AV は映画と一緒。そういう裏の努力は見せないんです。そういうのをわかっていただきたいなと思って。 

――なるほど。事前に爪を切っておく、みたいなのもこともコミュニケーション能力だったりしますよね。相手に嫌な思いをさせないという。
――著書の『ヒアリングセックス』にもそういったコミュニケーションのやり方について細かく書かれていますが、一番特徴的なのは、ヒアリングシートですね。

男性用と女性用とがあって、お互いの性欲の強さ、セックスの好き嫌い、セックスの目的、それこそ、下着の好みやチャレンジしてみたいプレイまで記述式と選択式とで記入するようになっているんですよね。



長谷川:セックスが始まっちゃうと「ここがいい」とか「ここが嫌だ」とか、なかなか言えないじゃないですか。「もうちょっと優しくして」って力加減を言うのだって簡単には言えない。だから、こういうシートを事前に容易して、「遊び感覚でやってみようよ」って。

――意外と、どういうことが好きか、どういうことがしたいかって、自分でもわかってなかったりします。それを考えるきっかけになりますね。

長谷川:そう。なので、パートナーがいない方でも、自分ってどうなんだろうっていうのがわかるような作りになっています。

――セックスをする前に、お酒とか飲みながら、イチャイチャしながら見せ合うと盛り上がりそうだと思いました。たぶん、女性の中でも、セックスに至るまでの会話の中で、このシートにあることを聞き出したり、希望をさりげなく伝えられるテクニックを持っている人はいると思うんですが、それって、ちょっと高度な技な上に、一方的でもありますよね。面接感覚っていうか。 

長谷川:そうそう。けれども、一度文字に起こすことで、疑念がわいてくると思うんすよ。例えば自分ではSだと思ってたけど、本当にSかなぁ、SかM か、はっきりは言えないなあとかって、これまでの思い込みを覆すこともできるんですね。可視化することで、よりわかりやすくなると思います。

――まずは、このシートを使ってお互いの性癖や性嗜好を確認しあい、そして著書の後半は、「じゃあ、どうするか」っていう具体的なテクニック指南が紹介されていて、とても親切な作りですね。

長谷川:流れ的にはそうですね。

長谷川:ただ、今までのセックスの概念を覆して欲しいというのがあって。どういうことかというと、ここ30年でAVが浸透したことにより、テクニック重視ということがセックスの主流になったと思うんです。

けど、そうじゃなくて、セックスは2人でするものだから、本来コミュニケーション重視だということを思い出して欲しいなって。もちろん、イケる時にはイったらいい。けど、イクをゴールにせずに、裸でくっついて、そこまでの関係性を持ったことが楽しいっていうふうになるといいかなと思います。これは女性に限らず男性もです。

――エクスタシーを目的におくと、ついついそれを求めてしまいますもんね。イかなくちゃ、イかせなくちゃ、とプレッシャーもかかるし、相手がイかないと、自分を責めてしまったり、逆にイけなかったことを申し訳なく思ったり。

長谷川:セックスの前提として、いとおしい気持ちを伝えあうことが抜けちゃってるんです。ただ射精に向かって突っ走るのって、昆虫のようなセックスじゃないですか。そうじゃない、人間らしいセックスをぜひ皆さんに楽しんでいただきたいと思って書いた本です。
――イクということへの固執を、一度取り払って望むと、世界が変わる気がします。ですが、そもそも、イクって何なのでしょう。意外と「イク」ってことが何なのか、自分の「イク」はきちんとエクスタシーと言えるのだろうかって疑問に思っている女性もいると思います。

長谷川:私も、AVに出ている時は、「これがイクなのかな?」って思ったものがあったんです。なんとなく気持ちいいから、これがイクってことなのかなって勝手に自分で思い込もうとしていました。

けれど、本当に「イクってこれだった!」ってわかったのはソープで働き始めてからですね。私、電マでイクのに慣れちゃっていたから、もう絶対人の手ではイケないと思ってたんですね。一生イケないだろうなぐらいに。それがイケたから嬉しくって。それからはイケるようになって。たぶん回路がつながったんだと思いますけど。

――イクためのコツを掴んだでんすね。ちなみに、その人はいったいどんなテクを使ったんでしょうか。

長谷川:すごく根気強い方で。私への愛情があって、「焦らないで、ただ横になって舐められてるだけでいいんだよ」って。1時間とかけっこう長い時間、舐めてくださっていたんです。自分でも、まさかイクとは思わないし、ためらっていたんですが、イケた。それ以来、めっちゃイキやすくなっちゃいました。

――電マの使いすぎで、セックスの時にイキにくくなってる女の子って、多そうですよね。

長谷川:これも、本に書いんですけど、女の子は電マを使うのを1回やめたほうがいいし、男の子も1回オナニーを少なくしたほうがいい。強い刺激に慣れすぎていて、みんなイキにくくなってると思うんですね。

やっぱりオナニーの方がいいイキやすいんですよ。けど、本当は、相手にイカされた方が気持ちいいと思うんです。だって、オナニーってイったらもう終わりじゃないですか。セックスはその後に、後戯があったり、「気持ちよかったねぇ」みたいにお互いに話し合うのも、楽しいですし。

――セックスってふたりの間の共通体験になるますもんね。 

長谷川:そうなんですよね。セックスの後って緊張もほぐれてるし、話してて楽しいじゃないですか。初対面であっても、旧知の仲みたいになれる。

――けどオナニーをすることで、自分の身体をきちんと知れるっていうのもありますよね。

長谷川:それはそうですね。まず、イクっていう感覚を知るのは、すごくいいことだと思うんです。ただ、オモチャを使う時は、出来るだけ弱めの刺激にする。弱い刺激に慣れることで、人の手でもイキやすくなると思うんです。

――強制的に自分をイかせるっていうよりは、弱め弱めで快感をすくいとっていくっていう感じですかね。

長谷川:そうです。そうしたほうが、セックスの時にイキやすくなると思います。
――中イキは、どうやったらできるんでしょうか。

長谷川:私、中イキが何っていうと、あんまり詳しく説明できないですけど、セックスで挿入中、男の人がイク時に、ものすごく気持ちよくなる時があるんです。男の人がイク時に、せり上がってくるもの、それが中イキなのかなと思うんですけど、あまりそれには、固執しない方がいいのかなって思うんですね。

――中イキはクリトリスでイクのよりも、何千倍も気持ちいいって話を聞いてしまうと、どうしても……。

長谷川:それ、本当なのかなって思います。例えば、クリトリスと乳首とアソコを一度にミックスして刺激すると、めっちゃ気持ちよくなったりとかはあるじゃないですか。けど、ただ挿入されているだけで、イクとかっていうのは難しいんじゃないかなとか。

経験豊富な人は、コツが分かるからイケると思うんですけど。でも、「中イキはクリトリスの何千倍も気持ちいい」みたいな概念を変えるセックス方法を、著書の中に書いたつもりです。(大泉りか/ライター)

(オトナのハウコレ編集部)


【書誌情報】

『ヒアリングセックス』著者名:長谷川:瞳 株式会社 KADOKAWA刊 定価:本体 1400 円+税

長谷川瞳(はせがわ・ひとみ)
東京都に生まれる。2001年に『処女宮 メモリアル』で AVデビュー。03年には及川奈央、神谷沙織、早坂ひとみ、紋舞らんと「ミリオンガールズ2003」に選出され一世を風靡した。また、デビュー前から 6作品連続で TSUTAYA のレンタルランキング 1位を獲得。「レンタルの女王」と呼ばれ、『トゥナイト2』(テレビ朝日系)などでも取り上げられたことも。04年に AV を引退。その後は川崎のソープランドに勤務している。AV 女優時代から行っていたライター業も続けており、現在は小説の執筆にもトライしている。

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