アイコン 第1回 「恋」vs「愛」

2016.11.26

第1回 「恋」vs「愛」

オトナのハウコレは、連載企画の第一弾にエッセイストの中村うさぎさんをお迎えいたしました。

整形に豊胸、興味本位からデリヘル嬢を経験しては、ホスト通いに明け暮れ、そして現在はゲイの旦那さまと同棲……。限りなくダイナミックな人生を歩まれてきた中村うさぎさんの言葉は、はたして、オトナのハウコレ読者にどう刺さるでしょう。

全五回にわたる、本質的な恋愛コラムがスタートします。

「恋」と「愛」はぜんぜん違うもの

こんにちは。中村うさぎです。

皆さんは今、恋や結婚や未来について、いろいろと悩んでいるお年頃だと思います。
幸せになりたいという想いは、誰でも同じ。

でも、自分の幸せって何なんだろう?
今の彼氏と幸せになれるんだろうか?

そんな迷いを胸に生きている皆さんに、お話ししたい事があるのです。




まずは、「恋vs愛」について。

皆さんは「恋」と「愛」の違いについて、考えたことがありますか?
「恋愛」なんて言葉があるように、このふたつはごっちゃにされやすいけれど、私は全然違うものだと思っています。

「恋」は、皆さんご存知のように、燃えるような激しい想い。

彼に会うとドキドキして、会えない時には会いたくてたまらなくなり、会えば抱きしめられたりキスしたりしたくなる。
そして、彼を誰にも取られたくない、いつも自分だけ見ていて欲しいと願いますよね。
そう、これは「独占」です。
お互いに相手を独り占めして、誰にも邪魔されたくないという気持ち。
二人だけの濃密な世界に閉じこもり、他の誰も寄せ付けない「独占」と「排除」……これこそが「恋」というものの特徴なのです。

それじゃあ、「愛」って何だろう?

「愛」という言葉から思いつくのは、「家族愛」から「人類愛」まで、じつに幅広い範囲。
「恋」と決定的に違うのは、それが「独占」ではないことです。
たとえば「人類愛」とは、人類を自分だけのものにしたいという気持ちではないですよね。
むしろ逆で、すべての人類に自分の愛を分け与えたいという想いです。

「独占」ではなく「分配」。
そして、すべての人を受け容れようという広い心です。

「恋」には二人きりの世界を誰にも邪魔されたくないという「他者の排除」が含まれてたけど、「愛」は「排除」とは正反対の「受容」の精神なんだ。

また、さらにもうひとつ、「恋」と「愛」では、激しさが全然違うことにも気づきます。
「恋」はとにかく燃え上がるような激しい高揚だけど、「愛」はもっと穏やかなものなんじゃないか。
「家族愛」や「人類愛」には、あのヒリヒリするような痛みも熱もなく、もっと心地良い安らぎがある。

ね、「愛も恋も同じようなもんじゃない?」なんて思ってけど、こうやってよくよく考えてみると、じつはまったく真逆のものだったんだと気づくでしょう?

「恋」の先に待っている二つの道とは・・・

じゃあ、私が求めているものは、「恋」なんだろうか、「愛」なんだろうか?

これは難しい問題です。
今、彼とラブラブな人は、ためらうことなく「恋」と答えるかもしれない。
でも、たとえば彼ともう何年も付き合っていて、かつてのラブラブ期間は過ぎちゃったけど、居心地がいいし安定感があるからなんとなく一緒いる、という人。
あなたと彼の間にある気持ちは、残念ながら、もう「恋」とは呼べないかもしれない。
だって今は「恋」の激しさも熱さも落ち着いて、穏やかな心地よさがあるだけだから。

ん? ちょっと待って。

穏やかな心地よさって、「愛」の境地じゃなかった?
そうか、私たちはもう「恋」の期間を過ぎて「愛」に到ったのかもしれない!

そうなんです。
「恋」の激しさが終わると、そこには二つの道がある。

ひとつはすっかり色褪せてしまった相手に嫌気がさして、お互いに些細な事が許せなくなって衝突を繰り返した挙句、別れてしまう道。

もうひとつは、「恋」の激しさから「愛」の穏やかさへと移行して、二人の間に新しい関係を育む道。
そして、この「愛」は、「独占」や「排除」とは真逆の「分配」と「受容」ですから、二人の世界に新たな存在を迎え入れる未来も暗示しているのです。

それは、二人で作る子ども。
二人だけの世界から、三人へ四人へと広がっていく「家族愛」の世界。
彼を自分ひとりで独占するのではなく、子どもたちとみんなでシェアする世界です。

折り合わない「恋」と「愛」。あなたにとっての幸せはどっち?

さあ、ここでもう一回、自分に問いかけてみましょう。

私が求めているのは、「恋」なんだろうか、「愛」なんだろうか?
今の彼とはもう「恋」の関係ではなくなったけど、次の段階である「愛」の入り口に来ていると感じる人は、ここでじっくり考えなくてはならない。
このまま進めば彼とは家族になっていく未来がありそうだけど、それでいいの?

また「恋」をしたくなったらどうするの?
私はあの熱くて激しい「恋」のときめきを諦められるのかしら?

これはもう、自分で決めるしかない問題です。
私にとっての「幸せ」とは何か。
家族のある「愛」の未来か、激しい「恋」を渡り歩く未来か。
そう、「恋」は激しいだけに、燃え尽きるのが速い。
「愛」はそれよりずっと長続きするけど、「恋」のあのとろけるような陶酔と高揚は二度と二人の間に戻ってこない。

どちらが私にとって「幸せ」なんだろう?

今現在、彼とラブラブの人にとっても、この話は他人事ではありません。
今は彼と別れる事なんて考えられないかもしれないけど、ラブラブ期間はすぐに終わる。
そうなると、別れて新しい恋を探すか、彼との関係を「愛」に繋げていくのか、今のうちに考えておいた方がいいのかもしれないからです。

そして、もしも「愛」を選ぶのであれば、自分の気持ちを少しずつ切り替えていかなくてはなりません。
「愛」は「恋」とは真逆の「受容」の精神ですから、まずは彼の欠点や価値観の違いを受け容れていこうと努力する。
それができないと、互いに許し合わずに衝突して別れる道に進んでしまうからです。
もちろん、これはあなたひとりではなく、彼にも「受容」の努力をしてもらう必要があります。

そのためにも、自分たちの未来について、彼とじっくり話し合ったほうがいい。
彼が「家族を持つなんてまだ考えられない」と言ったなら、結局のところそれは、彼があなたとの関係に「愛」を求めていない証拠です。そしてあなたが「恋」より「愛」が欲しいと願うなら、彼とは燃え尽きるまでの短く激しい関係と割り切りましょう。

その方が、あなたも無駄に傷つかず、自分の求める幸せへと着実に向かっていくことができるというものです。

選択が未来を変える

さて、どうでした? 胸の中にもやもやと煙っていた自分の未来が、少しは見えてきたでしょうか?
あなたの未来は、あなた自身の選択によって変わっていく。
そのためにはまず、「愛」と「恋」との区別をつけたうえで、自分の欲しいものが何なのか、自分の幸せとは何なのかを、真剣に問いかけてみる必要があるのです。

次回は「結婚」について、お話ししたいと思います。
今回の「愛」の話を思い出しながら、「結婚」とは何か、「家族」とは何かについて、ご一緒に考えていきましょう。(中村うさぎ/ライター)

(ハウコレ編集部)

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