オトナのハウコレ 最高のナイトライフのため

最終回 「幸せ」って何?

恋愛

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中村うさぎ

「中村うさぎの本質的に恋してみ論!」も、いよいよ今日で最終回。

クリスマスにこの文章を読んでくださっているみなさんは、彼とデート中?それとも家族や友だちと一緒?あるいは、ひとりの方もいるかもしれません。

どんな過ごし方をしていても、たった3分でいい、ちょっと真剣に読んでみてほしいのです。


中村うさぎさんがオトナのハウコレ読者に注ぐ、心からのメッセージ。最終回に、〝いちばん伝えたいこと〟をつづっていただきました。

ひとりクリスマスの女ってかっこ悪いのか?

皆さん、今年もやってきましたね。

そう、恋人たちの祭典・クリスマスです!

本当はキリスト教のお祭りなのに、日本では何故かカップルのお祭りと化している(笑)。

が、それはべつにいいのです。

お祭り、結構。大いに楽しめばいい。


ただ問題は、クリスマスを一緒に過ごす恋人がいない!という人々。

ずっと彼氏がいない人、たまたま彼氏と別れたばかりの人、あるいは不倫や遠距離などの事情で彼氏と一緒に過ごせない人……事情はそれぞれでしょうが、とにかくクリスマスをひとりで過ごさなくてはならない人にとって、まるで見せつけるかのような世間のカップルたちの浮かれたラブラブ気分は心に刺さります。


いや、それにもまして、「クリスマスをひとりで過ごすなんてかわいそう!」的な世間の目!

これですよ、これ。

この世間の白い目が、もっとも女心を傷つけるのです。

普段は彼氏なんかいなくて平気な人も、クリスマスシーズンが来ると妙に焦ってしまい、「とりあえずクリスマスを一緒に過ごす相手を見つけなきゃ!」と合コンに精を出したりする話も聞く。


そんな「期間限定彼氏」なんか作ってどうすんだ、と思う一方、その気持ちも痛いほどよくわかるのですよ。

私だって若い頃は、そういう気持ちになったもん。



だけど、クリスマスをひとりで過ごす女って、本当にかっこ悪いんだろうか?

むしろ、「クリスマスをひとりで過ごせない女」のほうがかっこ悪いんじゃないか、と、ある時期から私は思い始めました。

なんかさぁ、そんなふうに「世間の目」に振り回されるのって、バカみたいじゃない?

クリスマスやバレンタインが何だっつーのよ?

むしろ、世間がそんなアホな風潮に酔ってるような時期にこそ、ひとりクリスマスを悠々自適に楽しめちゃうくらいの自立性が欲しいもんだわ。


そう、私が嫌なのはね、「ひとりクリスマス=非モテ=惨めな女」という大雑把で無神経な決めつけなのよ。

普通に考えたら、群れなきゃ生きていけない女や男に依存しなきゃ生きていけない女より、ひとりで凛々しく生きていける女の方がかっこいいに決まってるんだ。

ひとりで生きられるって自由で素敵なことなのに、クリスマスだけは惨めなこととされてしまうの、おかしくない?


これって誰が作った風潮なのよ?

私たち? ううん、違うよね。

マスコミや広告業界やクリスマスに得する企業の連中だ。

要するに、金儲け主義の大人たちが勝手に作った風潮じゃんか。

そんなのに煽られて一喜一憂する必要なんか全然なーい!


「みんなでいるのに孤独」がいちばん苦しい

そこで私は、あえての「ひとりクリスマス」を提唱する次第であります。

まずは自分へのプレゼントと年に一度の贅沢ディナー&ケーキだ!


プレゼントは何ヶ月も前から、ネットやウィンドウショッピングで入念に下調べしてチョイスする。

自分で自分に贈るんだから、ハズレは絶対ないもんね。

その分、この時ばかりは妥協せず、本当に納得できる物を選んでね。

お店で買った場合は、クリスマスまでラッピングを開けないように我慢する。

ネットショッピングの場合は、注文時にクリスマスに届くよう指定するのもワクワクですよ。


そしてディナーは、デパ地下やホテルのデリカショップ(テイクアウトのお惣菜ショップ)がおすすめ。

高級レストランのお料理が、おひとり様分、気軽に買えるからね。

ついでにケーキも、そこで調達しちゃいましょう!

ワインやシャンパンの好きな人は、どうぞそちらもご用意を。


で、買ってきたお料理やスイーツに囲まれて、好きな映画のDVDを鑑賞するもよし、好きな音楽を聴くもよし。

とにかくもう、誰にはばかることもなく、好きな事しかしないのだ。

ちなみに私、映画やドラマやアニメはひとりで観るのが好き。

誰かと一緒に観てると勝手に巻き戻したりできないし、話しかけられて気が散るし、ろくろく集中できないもん。

ひとりだからこそ楽しめる事って、いろいろあると思うんだ。


孤独が怖いっていう人、いるよね?

だけど孤独って、必ずしも「ひとり」だから感じるものではないんだよ。

むしろ、彼氏と二人でいるのに、あるいは何人もの友人たちと一緒にいるのに、孤独を感じることがあって、そっちの孤独の方がじつはとっても苦しいのです。

大好きな人なのに、どうしてこんなに互いの気持ちを理解し合えないんだろう?

仲良しの友だちなのに、何故、みんなとの間に距離を感じるんだろう?

相手がいるからこその、ディスコミュニケーションの痛さと絶望。


それに比べれば、ひとりでいる時の孤独の方がずっと受け入れやすい。

だって、ひとりは自由だもん。

孤独と引き換えに自由を手に入れてると思えば、ひとりもなかなか悪くない。

だけど彼氏や友人に縛られて、なおかつ孤独だなんて、そっちの方がよっぽど不毛だ。

どうせ人間は、大人になればなるほど「孤独」になっていくんです。

死ぬまで孤独から逃げられないのなら、今のうちに孤独を楽しむスキルをつけておいた方がいい。


「ひとりクリスマス」は、そんな「孤独上手」になるための絶好の機会なのです。


最後に皆さんに伝えたいこと

さて、5回にわたって、皆さんにいろいろな話をしてきました。

「恋と愛との違い」「結婚」「ブスの恋愛」「セックス」……どのテーマにも共通している私の想いはただひとつ。


「みんな、幸せになって!」


ただね、「幸せ」なんてものは、人それぞれ。

幸せになるためには、「何が自分の幸せなのか」を、まずきちんと考えなくちゃいけない。

若い頃は、「幸せ」のイメージが漠然としていたり、世間一般の常識をそのまま鵜呑みにしてたりして、なかなか自分の幸せに気付けないのです。


でも、自分を幸せにするのは自分しかいないんだ。

だから、「みんながそう言うから」とか「他の誰かが幸せそうだから」みたいな理由で「幸せ」を定義するのではなく、あくまで自分のための幸せを考えて欲しい。


Aさんにとっての幸せが自分の幸せとは限らない。

あなたはあなた、AさんはAさんなんだから。


全然違う人間にとっての「幸せ」が同じ形であるわけないのです。

まずは、他人の「幸せ」に振り回されないこと。

それが、幸せになるための第一歩です。



あと、「○○したら幸せになれる」という考え方を捨てること。

「結婚したら幸せになれる」「有名になったら幸せになれる」「お金持ちになったら幸せになれる」「痩せて美人になったら幸せになれる」……こういった言葉をよく聞きますが、幸せなんてそんな単純なものではありません。

結婚には結婚の地獄があり、有名人や金持ちや美人にもそれぞれの絶望がある。


それは、今のあなたには想像もつかないほど、深く激しい苦悩なのかもしれないのです。

わかりやすい幸せなんて、信じちゃいけない。

幸せに「定型」なんかないんです。


自分だけの幸せを見つけるまでに、あなたはたくさんの失望を味わうでしょう。

幸せだと思って掴んだものが、じつはそうではなかったり。

どんなに頑張っても報われない苦しみを経験したり。

出口のないトンネルに迷い込んでしまうこともあると思います。

神様は意地悪なので、あちらこちらにそんな罠を仕掛けている。


でも、諦めないで欲しいのです。

その苦しみの中から得られたものこそが、あなたの幸せを形作るひとつひとつのパーツなのだから。

この世に無駄な苦しみなんてありません。





私は今まで、いろんな経験をしてきました。

20代前半くらいまでは、自分は普通に結婚して子ども産んで、平凡だけど幸福な人生を送るんだろうな、なんて漠然と考えてた。

だけど、だんだんそんな未来がつまらなくなってきて、思いきって会社を辞めて(それまで普通のOLだったのよ)、広告業界に飛び込みました。


その頃から、文章を書く仕事で身を立てようと思い始めたのね。

ところが、しばらくすると自信喪失して、結婚に逃げてしまった。

挙句、その結婚がすぐに破綻して、私はいよいよ逃げ道を失くしてしまったのでした。


離婚してから、私は無我夢中で働いた。

本当に私が欲しいものは何なのか?

まぁ、そりゃ愛もお金も欲しいけどさ、でもそのために何かを犠牲にしなきゃいけないとしたら、私は何を捨てられる?

そして、絶対に捨てられないものは何?


それは「自由」だった。

誰に禁止されることもなく、やりたいことをやる自由。

思いのままに生きて、それを言葉にする自由。

それが私にとって一番大切なこと。

私の「幸せ」だったのよ。


40代後半までは、ただただ突っ走るように生きてきた。

やりたいことは全部やった。

世間から何を言われても気にしなかった。

だって、これは私の人生なのよ?

私が私のために生きるのは当たり前でしょ。


でも、そうやってひたすら突っ走ってたら、ガス切れになっちゃったの。

やりたいことが何ひとつなくなって、抜け殻みたいになっちゃった。

そのうえ、3年半前に突然の病に襲われて、車椅子で生活する身になってしまった。

悔しかったわ。

今まで好き放題に生きてきたのに、どこにも行けず何もできない身体になっちゃったんだもの。


だけど、今はそれもひとつの経験と思えるようになったの。

だってね、ここで初めて私は「人に頼る」ことを学んだから。

何でもひとりでやってきたし、何でもひとりでできると思ってた。

だけど、私はひとりで生きていたわけではなかったのね。

周囲の人たちがちゃんと私を支えてくれてて、そして知らないうちに私もみんなを支えてきたんだって気づいたの。


こうして、58歳になって、私の「幸せ」の概念は変わったわ。

そう、自分にとっての「幸せ」は、人生の節目節目で変わっていく。

20代には20代の幸せ、30代には30代の幸せ……そうやって、常に「今の自分」にとっての幸せを問いかけて生きていけばいいんだ。

若い時にできないことが年取ってからできるようになることもあるし、若い時にできたことが年取ってできなくなることもある。

だから、今この時にできることを精一杯やることが、自分の幸せに続く道なんだと思ったの。


おわりに

私が皆さんに伝えたいのは、これだけです。

どうか、みんな、幸せを求めて精一杯生きてね。

人生は一度きりなんだからさ。(中村うさぎ/ライター)


(ハウコレ編集部)

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