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第4回 セックスについて

恋愛

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中村うさぎ

第4回のテーマは、「セックス」。

パートナーともっと満たし合えるセックスがしたい、そう望む人は多いですよね?

そのために、こういう前戯をして、こんな体位で……と目先のテクニックばかりを追い求めてしまいがち。

でも本当に見直すべきは、もう一歩奥に踏み込んだところにあるのかも。


最高のセックスって何?男女でセックスに求めるものはどう違うの?


オトナのハウコレらしいテーマに、踏み込みます!

セックスで失神するには才能が必要だ

今回は「セックス」について考えたいと思います。


読者の皆さんがどんなセックス観を持っているのか、私にはわかりません。

「セックスは愛の表現。彼氏と最高のセックスがしたい」と考える人もいるでしょうし、「気持ちよければ相手は彼氏じゃなくても構わない」と考える人もいるでしょう。

どちらも間違ってませんし、それぞれが自分にとっての「最高のセックス」を求めればいいだけです。


ただ問題は、多くの人が「最高のセックス」などに辿り着くことができず、「何かが違う。何かが足りない。このままでいいのだろうか?」と思い悩んでいること。

はたして「最高のセックス」なんて本当に存在するんでしょうか?



私は長いこと「イクって何なんだろう?」と考えてきました。

何故なら、私はポルノ本やAVなどで語られるような「頭が真っ白になった」とか「失神した」とか「潮吹いた」などという経験が一切ないからです。

もしかしたら都市伝説なのではないかと疑い、いろんな女性と対談して「イク体験」について訊いてみたこともあります。


すると、世の中には本当に失神したり我を忘れて気持ちよくなれたりする人がいると知りました。

中には「頭の中で記憶が走馬灯のように駆け巡り、5歳くらいの記憶までさかのぼった」などというまるで臨死体験みたいな話を聞かせてくれた人もいました。


彼女たちが嘘をついているとは思えません。

たぶん世の中には、そんな体験をする人もいるのでしょう。

羨ましいと思うと同時に、私はたぶん一生そんな体験はできないなと実感しました。


そういうのって、セックスの修行を積めば到達できるようなものではなく、理想の相手に巡り合えば体験できるものでもなく、本人の「才能」だからです。

たとえば「絶対音感」を持つ人がいるように、セックスに関しても「絶対性感」を持つ人がいるのではないか。

失神したり臨死体験したりできるのは、そういう限られた人たちじゃないかと思ったわけです。


というのも、そういう人たちには共通点があって、非常に自己陶酔的というか、自分ツッコミのない人たちなのです。

私の場合、脳内にハリセンを持った「ツッコミ小人」が住んでいて、少しでも私がいい気になったりすると、そいつがすかさずバシッと私をしばき、「いい気になってんじゃねーよ!」とツッコミを入れてきます。


たとえば誰かに「お綺麗ですね」などとお世辞を言われて「あら、そうかしら」なんてちょっといい気持ちになったりすると、「アホか!お世辞に決まってんだろ、ブス!」とツッコミ小人が耳元で叫び、その途端に私はギクッとして現実に引き戻されるのです。



こういう厄介なツッコミ小人を脳内に飼ってる人は、私だけではありません。

いわゆる「自意識こじらせ系」の女子は、たいてい、この小人のせいで自惚れや自己陶酔を許されず、恋愛やセックスにおいても窮屈な思いをしています。


もちろん、私だってセックスが気持ちよくないわけではありません。

ただ、気持ちよくなってくると例のツッコミ小人が現れて「何が『ああ~ん』だよ、ひひっ」などとあざ笑うので、なかなかセックスに集中できない。

頭の片隅のどこかに醒めた目で見ている自分がいて、「私、これ、ほんとに気持ちいいのかな」とか「こんなことしてる場合じゃないだろ、ほんとは」とか「この体位だと、私、すげぇブスに見えてんじゃないか」とか、もう、気持ちが萎えるようなことをいろいろ思い浮かべてしまうのです。

せっかくいい気持ちになってきても、これでは「失神」などという境地に辿り着けるわけがありません。


その点、失神や臨死体験をしちゃう人たちは、このようなツッコミ小人もいなければ、セックスの最中に「何やってんだ、私?」的な醒めた気分になることもない。

思いっきり自己陶酔しちゃう自分を恥じたり照れたりすることもなく、快感の激流に進んで身を投じてしまうのです。


なんなら、そんな自分を「私っていい女~」などと思っているフシもありますね。

これはこれでひとつの才能だと、私は思うのです。

人間、なかなかそこまで自分に酔えないもんです。


セックスは「ワッショイ」しないと盛り上がらない

とはいえ、才能のない女だって、できるだけ気持ちいいセックスはしたい。

それは当然ですよね。


でも、セックスで「あんあん」と盛大に声を出してる自分に照れちゃう女、そして、女の喘ぎ声に「どうせ演技だろ」なんてことをいう男……こういう人たちに、私はひとこと言いたい。


セックスで女が「あんあん」言うのは、決して自然に出てる声とは限らないが、だからといって演技でもないぞ!

いいか、心して聞け。

あれは「ワッショイ!」なんだよ!


お祭りの時に神輿を担ぐ人たちが「ワッショイ、ワッショイ」言うのは何故だと思います?

あれは、自分を鼓舞し、周りをあおり、全員でひとつになって盛り上がるためではありませんか。


セックスの時の「あんあん」も一緒です。

無言でセックスしてたら、あなたも相手も、どんどん気持ちが醒めてしまう。

そんなんじゃあ、気持ちいいセックスなんかできっこない!


そこで、女は「ワッショイ」するのです。

ひとつには、自分を鼓舞するため。

声を出してるうちに、だんだん気分が盛り上がり、気持ちよくなってくるからです。


これ、オナニーをしてる時もそうですよ。

黙ってオナニーしてるより、声を出してみたほうが、ずっと興奮度が高まります。

ひとりでしてる時に声出すなんてバカバカしいと思うかもしれませんが、「声」の効果はすごいです。

スポーツ選手が競技中に声をあげるのも、自分のテンションを上げるためです。

声を出すことで脳が反応し、脳内麻薬がドバドバと出るのです。



もうひとつの目的は、相手を興奮させるため。

女の声に男の脳も反応し、これまた脳内麻薬がドバドバ出ます。

そして、二人でどんどん盛り上がり、一体となって、ついにフィニッシュへと突入する。

ワッショイ、ワッショイ、あなたもワッショイ、私もワッショイ、二人でワッショイ、ワッショイ、ワッショイ……あああ、イッちゃう――っ!!!

これですよ、これ。


セックスはお祭りなんだと思えば、ワッショイの掛け声も自然に出せます。

相手だって、それがワッショイだと理解してれば「演技だろ」なんて白けたことは言わなくなる。

せっかく一緒にお神輿担いでるのに、ワッショイ言わないほうが場をシラケさせるってもんじゃありませんか。

ワッショイが嫌だってんなら、お祭りに参加しなけりゃいいんです。

ひとりでチンコの皮でも剥いてなさい!


どうですか?

たとえ失神はしなくても、ワッショイ効果でセックスはかなり盛り上がり、興奮度も高まります。

あなたにとっての「最高のセックス」が、そこにあるんです。

そして何より、二人でワッショイすることによって、相手との一体感が味わえる。

これ、女子にとってはかなり重要な要素ですよね。


男と女はセックスに求めるものが違うのか?

そう。女は恋愛やセックスに、相手との「一体感」を求めます。

ところが男は、そうでもないように見える。

特にセックスが終わった後、男が急にサバサバしちゃってムッとしたことはありませんか?


セックスの後、もっと正確に言えば射精の後、男は「賢者モード」になると言われています。

すっかり憑き物が落ちたようにセックスに興味がなくなり、肉体的な接触さえ面倒くさくなる……らしい。

女はセックスの後もイチャイチャしていたいのに、男にそっけなくされて傷つくことも多々あります。


さっきまで一体になってたはずなのに、なんでこんなに距離があるの?

私のこと愛してないの?

セックスさえできればどうでもいいの?


そんなことはありません。

愛とコレとは関係ない。

単なる生理現象です。

どんな大好物でも、お腹いっぱいになったら食べられないし、見るのも嫌になっちゃうでしょ?

だけどしばらくしてまたお腹が空いてきたら、やっぱり大好物は美味しく見えてくるし、また何度でも食べたくなる。

そんな感じだと理解してれば、彼の「賢者タイム」にいちいち傷つくこともなくなります。

「あ、お腹いっぱいになっちゃったのね。よかったね」って思ってあげればいいのです。


それにしても、男と女って、生理条件があまりにも違い過ぎます。

たとえば男は主に視覚情報で興奮する(だからオナニーのオカズにはヌード写真やAVを愛用します)けど、女はむしろシチュエーションとか関係性といったストーリー性に萌える傾向が強い。

女のパンティがチラッと見えただけでも男は性的に興奮しますが、女の方は男のパンツを見ても何も感じません。

パンツには何のストーリー性もなく、ただの物体だからです。



また、性的衝動の強さも全然違いますよね。

男はやりたくなったらほとんど我慢できませんが、女はそういう状態になるまで時間がかかる。

なので、男の中には「女には性欲がない」と思い込んでる人もいるようです。

そんなわけないんですが、あまりにも違うので理解できないんでしょうね。


でもね、お互いに違い過ぎて理解できないことを悲しむ必要はないと思うんです。

むしろ似てないからこそ、お互いに幻想が持てるとも考えられる。

悲しい誤解も生みますが、都合のいい勘違いもそこから生まれます。

その「都合のいい勘違い」こそ、恋愛やセックスの醍醐味なのかもしれません。



男と女は、違うからこそ面白い。

でも、そんなに距離があるのに、「ワッショイ効果」でひとつになれる。

これって素敵なミラクルだと思いませんか?

皆さん、どうか、このミラクルを最大限に楽しんで、気持ちいいセックスをしてくださいね。(中村うさぎ/ライター)


(ハウコレ編集部)

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