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第2回 結婚

恋愛

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中村うさぎ

連載企画『中村うさぎの本質的に恋してみ論!』の第二回目のテーマは、「結婚」。

彼とそろそろ結婚かな…婚活して素敵な人を見つけたいな…などと考えている方は、まずはこれを読んでほしい。

ゲイの旦那さまと、今年でなんと19年目の結婚生活をむかえたうさぎさん。前回に引き続き「愛」と「結婚」のつながりや夫婦間のセックスなど、結婚においてとても大切なことを、丁寧につづっていただきました!

幸福な「結婚」ってなに?

皆さんの中には、そろそろ「結婚」を真剣に考え始めていらっしゃる方も多いことと思います。

今の彼氏と結婚するかどうかで悩んでいる人もいれば、結婚はしたいけど理想の相手が現れないと嘆く人もいることでしょう。


が、その前に、「結婚」に必要なものは何なのか、自分にとってどんな「結婚」が幸福なのか……それを、ここで改めて見つめ直していただきたいと思うのです。



結婚したら必ず幸せになれるなんて、そんな単純な夢を抱いてる人はいないでしょう?

だって、皆さんは知っている。

この世には結婚しても全然幸せじゃない人たちもたくさんいることを。


愛し合って、周囲からも祝福されて結婚したのに、やがて憎み合い、別れるカップルもいる。

離婚こそしないけど、もはや夫婦間に愛情はなく、冷ややかな毎日を送っている夫婦もいる。

どれも幸福とは程遠い。

そんな結婚なら、しないほうがマシなくらいです。


幸福な結婚って、どうやったら実現できるんだろう?


それを考える時に大事なのは、やっぱり「愛」と「恋」を分けて考えることだと私は考えます。

結婚とは家族になること、家族に必要なのは「恋」ではなくて「愛」。

ラブラブのカップルが必ずしも幸福な夫婦になれないのは、「恋」から「愛」へのソフトランディングに失敗するからです。



たとえば、セックスの問題。

夫婦間の深刻な問題のひとつに「セックスレス」があります。

長年一緒に暮らしているうちに、男と女は「異性」ではなく「兄弟姉妹」のような感覚になります。

それが「家族」になる、ということなのかもしれません。


子供が生まれたら、なおのこと、「彼氏彼女」は「パパとママ」になり、性的な関係から遠ざかっていく。

極論すれば、「家族」に「セックス」は不要になっていくのです。

すると当然、性的欲求不満が募りますから、浮気をしたり、風俗で性欲だけ満たしたりして、またそれが夫婦ゲンカの原因になったりします。



いったい、どうすればいいのでしょう?


結婚を長続きさせたかったら、セックスは諦めた方がいい、というのが私の意見です。



性的欲求不満をどう解消するかは、それぞれの夫婦が話し合って決めればいい。

性欲には個人差がありますし、解決法はひとつではありません。

家庭を壊さないことを条件に、お互いの浮気を黙認する方法もあるでしょう。

あるいは浮気はダメだけど風俗はOKという割り切り方もあります(ネットで探せば女性向けの風俗もありますからね)。


絶対に浮気もセックスもしないとか、お互いに性的関心が薄れても月に何回かはセックスしましょうとか、そういう取り決めをする夫婦もいると思いますが、その約束がどこまで守られるかは疑問です。

やはり、適度にガス抜きをする方が賢明なのかもしれません。


中村うさぎの結婚生活。一度目な完全な失敗

ちょっと過激な意見だと感じる人は多いでしょうね。

ごもっともです。

でも、ご参考までに、私の結婚体験談を聞いてください。



私はバツイチで、現在、二度目の結婚生活をしています。

最初の結婚は恋愛結婚でした。

燃え上がるような激しい恋で、周囲の反対を押し切って結婚しました。

そして、あっという間に破局したのです。


原因は、セックスレスでした。


結婚してしばらくすると、彼は私とセックスしなくなり、私に黙って外でするようになったのです。

私はもう彼に愛されてないのかと思い、悩み苦しみました。

そして、そのうちに彼に対する憎悪が募っていき、自分も浮気するようになりました。

彼がそれを知っていたかどうかは、いまだにわかりません。

薄々気づいていたけど、黙っていたのかもしれない。


でも、私たちはそれを話し合って決めたわけではなかったので、お互いに自分の浮気は隠しましたし、相手に対する不信感も増す一方で、最終的には愛よりも憎しみの方が強くなってしまいました。


完全な失敗例です。


最初の結婚があまりにも辛かったので、私は二度と結婚なんかするものかと決心しました。

その後も恋はしましたが、結婚は考えませんでした。



ところが数年後、私は二度目の結婚をすることになります。

ゲイの夫と二度目の結婚。そのゆくえは ・・・

今度の相手はゲイでした。

男性にしか性的関心のない男です。


でも私たちはとても仲良しで、恋愛感情はないけどお互いのことを理解して信頼している大の親友だったのです。

あのままだったら、今も私たちは夫婦ではなく、親友関係を続けていたかもしれません。


そんな彼と結婚することになったきっかけは、香港人である彼のビザが切れたからです。


ビザが切れたら香港に帰らなくてはならない、でも自分はまだ日本にいたい、と悩む彼と一緒に入国管理局に相談に行きました。

すると、その入国管理局の相談口のおっさんが、めちゃくちゃ感じ悪かったのです!

おっさんは偉そうな口調で「何の能力もない外国人にほいほいビザを出すほど、日本は甘い国じゃないんだよ。どうしても日本にいたいなら、日本人の女と結婚するしかないね」と言い放ちました。


その口調にあまりにもムカついた私は思わず「ああ、そうですか。わかりましたよ。結婚すればいいんですね。そんなら文句はないんでしょ」などと言い返してしまいました。



入国管理局を出た後、しばらく二人で歩きながら話をしました。


「さっき、勢いであんな事言っちゃったけどさぁ、あんたはどうしたい? 日本人と結婚して日本にこのまま住んでいたい?」

「本当はそうしたいけど」と、彼は答えました。

「ワタシはゲイだから、それを隠して誰かと結婚したら、その人を不幸にしてしまう。一生をめちゃくちゃにしてしまうと思うの。だから、そんなことはできない。ワタシがゲイだと知ってて結婚してくれる人がいたら、それが一番理想だけど」

「なら、私と結婚する? 私はあんたがゲイだって知ってるし、もう二度と誰かと結婚することはないと思うから、べつに籍入れるだけなら全然OKだよ」

「本当にいいの?」

「いいよ、いいよ。そうしよう」


そんな感じで、私たちは入籍し、戸籍上の夫婦となりました。


ただ、最初は別々に住むつもりだったのです。

あくまで結婚は書類上のこと、どうせ私たちの間に恋愛もセックスもないのだから、今までどおり別々に暮らして、それぞれ自由を満喫しようと思っていました。



ところが、ある時、彼が病気になってしまったのです。

すごく心配して一緒に病院に行って、もしかしたら彼は死ぬんじゃないかと思いました。

それで「ひとりで死なせるわけにはいかない」と思った私は、彼に「一緒に住もう」と提案したのです。


夫婦だけど、「恋愛」と「セックス」はお互い自由

こうして、私たちは普通の夫婦と同じように、ひとつ屋根の下で一緒に住むようになりました。

この時に、いくつか、二人の間で取り決めをしました。


まず、恋愛とセックスはお互いに自由にする、ただし一緒に暮らしている家に男を連れ込んでセックスするのは禁止(だって夫が誰かとセックスしたベッドで寝るの気持ち悪いもん。ベッドは共有だったからね)。


それだけ守れば、あとは何してもOK。

そんな感じのスタートでした。


それから、いろんなことがありました。


私がホストにハマって全財産使い切ったり、夫に彼氏が出来て一時的に別々に暮らしたこともあります。


別居した時も、仲が悪くなったわけではありません。

夫の住む家にしょっちゅう遊びに行ってました。

それからまた一緒暮らすようになり、そうこうするうちに今年でもう19年目です。

驚くほど長い時間を、彼と共有してきました。

最初に結婚した時には、こんなふうになるとは考えもしなかった。



そして今、私たちは完全に「家族」です。


三年前に私が病気をして車椅子になってからも、彼はずっと付ききりで介護をしてくれています。

週末には夫の彼氏も来て、私の世話をしてくれます。

恋愛もセックスも子どもも、私たちが家族になるには必要なかった。

必要だったのは、お互いの愛情と理解と思いやり……そう、前回も言った「受容」なのです。


相手の欠点もすべて理解したうえで受け容れること。

それこそが「家族」に一番必要なものなのだと私はつくづく感じています。


「結婚」とは家族になること、「家族」とは相手の居場所になること

一度、夫としみじみ話し合ったことがあります。

私が金を使い果たして税金を滞納し、税務署に呼び出された時のことです。


「ごめんね、こんなダメな妻で。いい加減、呆れたでしょ。嫌になったら別れてくれていいからね」

そう言った私に、夫がこう答えました。

「ワタシとあなたの生き方って全然違うのよね。あなたは刺激がないと生きていけない人でしょ。毎日が変化に富んでて、何か新しいことが起きないと退屈してしまう。明日が今日と同じ繰り返しなんて耐えられない人なのよね。

ワタシは逆なの。毎日が平穏無事で変化がないことこそワタシの幸せ。明日が今日の繰り返しでも構わないし、むしろその方が安心なのよ。だから最初の頃、ワタシはあなたの生き方が全然理解できなかった。

でもね、思ったの。この人だって、いつかはこんな生き方に疲れてしまう日がくるだろうって。その日まで、ワタシは家であなたを待ってる。あなたが疲れて帰ってきたら、ワタシが『おかえりなさい』って言ってあげるの。ワタシの役目はそれなんだって」


この言葉を聞いた時、私は心の底から「ああ、私たちは家族になった」と思いました。

家族とは、相手の「居場所」になることなんだ。

私も彼の「居場所」になってあげたい、と。


もちろん、これはあくまで私と夫のケースであり、皆さんに「ゲイと結婚しろ」と言ってるわけではありません(笑)。

ただ、「結婚」とは「家族」になることで、「家族」とは義務でも何でもなく心から相手の「居場所」になろうとすることだ、と言いたいのです。


異性としての魅力や恋の激しさやセックスは、いずれ失われていくもの。

それよりも大切なものがあることを、皆さんに知って欲しかったのです。


あとは皆さんが、自分なりの「結婚」を考えてくださればいい。



以前、私は『結婚はオートクチュール』という本を出しました。

結婚は、それぞれが自分の体型やサイズに合わせて作り上げていくもの。

既成の「結婚」の概念に無理やり自分を押し込むと、苦しい思いをした挙句にどこかがピリッと破れて破綻してしまうのです。

だから、皆さんも、自分たちに合った「結婚」を、彼と作り上げてくださいね。(中村うさぎ/ライター)


(ハウコレ編集部)

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